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話題のSNS「Mastodon」が加速(ブースト)させたもの

 現在ネットの一部界隈をにぎわせている「Mastodon」というサービスがある。

news.livedoor.com

 記事を見てもらえばわかると思うが、簡単に説明しておくと、Mastodonとは一個人、企業が自ら専用のTwitterサーバーを建てることが出来るプラットフォームのことだ。ユーザーはあるサーバーに登録するとそのサーバーで投稿されている文章や画像だけでなく、そのサーバーが同盟(リンクという)を組んでいるサーバーで発信されたコンテンツも見ることができる。

 私はこのサービスがTwitterを食う可能性は非常に高いと考えている。その理由は次の一言に集約される。

 

世界が区分されたことで逆に世界が拡がった

 Twitterは全世界とつながりを持てる可能性を示し、人と人との間の垣根をなくした。しかし、一個人に対して世界は広い。広すぎた。「興味あるアカウントをフォローしよう!」と促され次々とフォロー数を増やしていくと、タイムラインに流れていく情報は瞬く間にその有機的なつながりをなくしていき濁流と化す。様々な界隈のツイートが入り乱れて、それぞれの世界で何が起こっているのか把握しきることはできない。

 そこで登場するのがリスト機能だ。この機能により閲覧者は自分の興味ある分野の情報を整理された形で受け取ることが出来る。しかし、リスト機能はそのリストに入れられたアカウントと自分との直接のつながりを持てるわけではない。フォロー・フォロワー関係にならなければ相手との関係は他人のままだ。また、フォロー・リスト両方に言えることだが、あくまでもこれらの機能は「自分が認知した範囲の世界で起こっていること」しか伝えない。隣接する分野の情報はリツイートなどで時折流れてくるのみで、自分が住んでいる世界の隣人がなにをしているのか分かりづらい状態だった。

 言うなれば、Twitterはどこまでいっても「個と個のつながり」を支援するだけで、自分の所属するコミュニティ全体を網羅的に見渡せるような機能はなかった。そして、「ウチ(=フォロー)」「ソト(=フォロー外)」と世界を二分し、広い世界が提供されているにも関わらず、ウチの世界に引きこもっていく状況を作り上げてしまった。これがいわゆるTwitterに対する揶揄として「自分のほしい情報しか得ない」「世界が広がったのではなくむしろ狭まった」とか言われる原因だ。「FF外から失礼します」という言説にもその性格がよく表れている。

 

Mastodonが加速させたもの

 このような状況でMastodonは発表された。web版Mastodonには4つのカラムがある「ツート(Twitterでいう「ツイート」)」「ホーム」「通知」そして「『ローカルタイムライン』と『連合タイムライン』を含む切り替えカラム」だ。ホームには自分がフォローしたユーザーのツートが、ローカルタイムラインにはユーザーが登録したサーバーで発信されたツートすべてがリアルタイムで流れていく。そして連合タイムラインではローカルタイムラインで流れる情報にプラスして、自分が登録したサーバーと同盟を組んでいるサーバーのツートも流れるようになっている。現状、他のサーバーのローカルタイムラインを見るためにはそのサーバーのアカウントを新しくとる必要がある。

 MastodonがTwitterと異なる点は「世界が明確に区分された」ことだ。「世界が狭まった」とも言える。しかし、このことが「広い世界」の問題点を解消した。

 Mastodonが解決した問題について話す前に現在のMastodon界隈の状況について話したい。

 現在建てられているmstdn.jp(https://mstdn.jp/about/more)や現在世界最大のサーバーであるmastodon.socialなどは「総合サーバー」とでも言うべき状態で、皆がとりあえず登録するものとなっており、現状ほぼTwitterと変わりないと言ってもいいだろう。

 もちろんすべてのサーバーそうなっているわけではない。Mastodonの利点は何といっても有志が自分でサーバーを建てられる点にある。例えば、大手イラストコミュニケーションサービスであるpixivが建てたサーバーpawoo.net(https://pawoo.net/about/more)にはイラストレーターが集まりローカルタイムラインは投稿された絵であふれている(pixiv側がイラスト投稿を目的としていたのかは分からないが)。ほかにも現在時点で様々な目的を持ったサーバーが建っており(ゲームクリエイターサーバー、「イカ娘」サーバー)今後その数が増えていくことは確実だ。そしてこの「特定の運営目的を持ったサーバー=テーマサーバー」がTwitterの抱えている問題を解決する。

 ユーザーは自分の興味あるテーマサーバーに登録することでTwitterでは得られなかった「界隈全体の短期的な流れ」を発生直後に、そして網羅的にローカルタイムラインから受け取ることが出来る。ローカルタイムラインではそのサーバーに接続しているユーザーのツートが滝のように流れていくが、全くバラバラな情報を発信しているのではなく、それらはまとまって一つの流れを形成している。そして見ている者に情報を「読ませる」のではなく「感じさせる」。

 また、ツートが全体の目に映り、自分と同じ興味を持っているので他者からの反応が来やすい構造と「同じサーバーに所属している」という気持ちを持てることから、「コミュニティへの帰属意識」も得やすい。

 そして、特に設定をしなければ、すべてのツートは連合タイムラインにも流れることになる。連合タイムラインには周辺の界隈の情報が流れているので隣人とのコミュニケーションもとりやすい。

 つまり、Mastodonは「ウチ」と「ソト」の間に「ローカルタイムライン」というクッションが敷かれているので、世界の内外とのコミュニケーションがとりやすい土壌ができている。これがMastodonがTwitterを食う可能性があると言った理由だ。全世界に開かれた土地にポイと生身で投げ出されるのと、コミュニティへの帰属意識を持ち、緩く世界と繋がっている状態と、どちらが居心地がいいだろうか。

 技術面、倫理面でいまだ様々な問題が残っているが、これらが順調に解決されルールが整ったときに現在斜陽であるTwitterはどうなってしまうのか。中新世から蘇った象がその鼻で鳥を捕らえる日は近いのかもしれない。